医師が解説。運動で脳は鍛えられる!

皆さん普段運動はしていますか?実は運動をすると、身体を鍛えるだけではなく、脳を鍛えることが出来ます。それは運動によって、ドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質が脳内で分泌され、集中力や判断力、想像力などの脳機能が上昇し、モチベーションがアップするからです。

運動というと健康面にフォーカスすることが多いと思います。それ故に、運動によって得られるメリットというと「病気の予防」や「ダイエット」と考えてしまうと思いますが、このように運動で脳は鍛えられるのです。

以前は、脳の神経細胞(ニューロン)の数は生まれつき決められており、加齢にともなって減少し、増加はしないと考えられていました。しかし、ハーバード大学医学部のジョン・J・レイティ博士は著書『脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方』(2009年NHK出版)の中で、運動がBDNFの脳内分泌を活性化させ、脳のニューロンや、脳に栄養を送る血管の形成を促すことを明らかにしました。

※BDNFとは:脳由来神経栄養因子と呼ばれるタンパク質の一種で、神経細胞の発生や成長、維持や再生を促進する。記憶を司る海馬に多く含まれ、神経細胞の動きを活発化させる

実際に、学業成績と運動との関連性については、アメリカのカリフォルニア州教育局で2001年、同州の小学5年生約35万人、中学1年生約32万人、中学3年生約28万人を対象に行った大規模な調査が行われ、体力調査での成績が高い子供ほど、学業成績も優秀な傾向があることが確認されています。


座りっぱなしは寿命を縮める!

なんと1時間座りっぱなしでいると寿命が22分短くなるという結果が出ています。特にコロナ禍によって、テレワークやオンライン授業が増え、以前のように自由に外出できなくなっている昨今、世界中で運動不足が進んでいます。みなさんはいかがでしょうか?

シドニー大学が世界20カ国を対象に平日の座っている時間を調査した結果、世界20カ国の平均約5時間(300分)に対して、日本人は約7時間(420分)と最長でした。1日に座っている時間が4時間未満の人に比べ、8〜11時間の人の死亡リスクは15%増、11時間以上だと40%増になるという報告があり、計算すると1時間ごとに寿命が22分間短くなるという結果になります。

これは、30分座り続けるだけで人の筋肉の中の約7割を占める足の筋肉が動かないため、血流速度が低下して、代謝機能が低下し、高血圧や動脈硬化が進行するためです。

しかも、座り続けることによるデメリットは、あとから運動しても元の状態に戻すことはできません。出来る限り、1時間に1回は立ち上がり、コーヒーを淹れる、軽くストレッチをするなどの簡単な動作を入れることで意識して座りっぱなしの状態を回避しましょう。

朝の散歩が効果的!

脳を鍛えるための運動としておすすめなのは、朝起きてから1時間以内に20分程度の散歩をすることです。

さまざまな評価項目の中で特に心肺機能が学業成績と強い相関関係を示しており、一定時間にわたって心拍数を上げるタイプの運動が効果的です。これは仕事にも同様のことが言えます。

週に2日は最大心拍数の75.90%まで上がる運動を短めに、残り4日は65.75%までの運動をやや長めに、というのが脳のためには理想的とされています。心拍数の目安としては、ランニングでたとえると、最大心拍数に対して80%以上というのはかなりきつい全力疾走、70%はやや息が上がる走り込みです。

朝の散歩は脳内物質がたくさん出るだけでなく、日々の運動不足が補えるなどさまざまなメリットがあります。朝日を浴びることで、自律神経が副交感神経から交感神経に切り替わり、さらに精神面にいい影響を与えるセロトニンが活性化し、体内のビタミンDが増えて免疫力がアップします。

朝の散歩には以下のことに気を付けましょう。

  1. 起床してから1時間以内の日が出ている時間に散歩をする
  2. 1回の散歩は20分程度をやや早足で歩く
  3. 朝散歩は過度な紫外線対策をせずに地上を歩く※紫外線は目から入ることでセロトニンが活性化し、肌に浴びることでビタミンDが作られるため、サングラスや紫外線カットの長袖などは着用しない
  4. 音楽などは聴かず歩くリズムに集中する※セロトニンは脳の指揮者と呼ばれリズムを取ることで分泌されやすくなる。「1、2、1、2」と脳の中でリズムをとりながら歩く

(ブレインメンタル強化大全 樺沢紫苑著より)

これらを意識すると、朝散歩をするだけで1日のパフォーマンスがあがり、運動不足も解消されます。さらに習慣的に運動することで24時間のリズムをはっきりさせる効果があります。朝から散歩をする時間が取れない人は、通勤時間などを利用してリズムに集中して早足で歩くだけでも1~2週間程度で効果を実感できるはずです。

脳が鍛えられる!運動がもたらす脳科学的メリットとポイント

朝に運動をするだけでリズムを作ることができ、集中力や判断力、想像力などの脳機能の上昇、モチベーションアップといいこと尽くしです。

以前は、1回の運動は30分以上しないと効果がないとか、体にいいのは筋トレよりも有酸素運動だと言われていました。そのため、運動が苦手な人や習慣化していない人にとっては、ハードルが高いものでした。しかし、最近の研究で、それらの情報は間違いであることがわかってきています。

運動と聞くと、ジムに通ったり、ランニングをしたりしなければならないと想像しますが、普段の歩行や家事、通勤などにおいて意識するだけで簡単に運動へとつなげることができます。

運動と脳科学は密接に関連しており、日々の行動によってもの覚えや認知面という機能のみでなく、思考や感情といった精神面にも優位に働きます。新型コロナウイルスによって生活の変化を余儀なくされている今、体を動かすことをライスタイルに取り入れてみたらいかがでしょうか。

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著者:白水寛理
プロフィール:国立大学医学部卒業後、脳神経外科医として数多くの経験を積む。脳に関しての専門的な経験が豊富。現在も脳神経外科医として大学院に勤務。
所属:日本脳神経外科学会、日本脳神経外科コングレス、日本脳卒中学会、 日本小児神経学会、脳神経血管内治療学会、日本神経内視鏡学会

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